孝之と遙の、初めてのデートらしいデート。
駅で待ち合わせていると、見知らぬ女の子が話しかけてきた。
「合計35点。合格には程遠いですねぇ」
彼女の名前は涼宮茜。
遙の妹。
水月を目標に、日々水泳に打ち込む元気な女の子。
電車に乗って目的地へ向かうも、前日の疲れでついつい車内でうとうとしてしまう孝之。
気づけばそこは見知らぬ駅で、当然、目的の駅は通り過ぎてしまっていた。
謝る孝之に、手作りのミートパイを差し出す遙。
田舎の駅のベンチに腰かけ、2人きりで寄り添いあう。
家に帰ってきたころにはすでに暗くなっていた。
家の前で話していると、朝あった妹の茜が帰ってくる。
お呼ばれはしたものの、時間も時間だからと遠慮していると、半分強引に家の中に連れて行かれる孝之。
突然の訪問にもかかわらず、温かく迎えてくれる遙の両親と妹の茜。
「将来のことはともかく、鳴海くん、付き合っている間は、遙を大事にしてやってくれ」
そういわれた遙の父親に、思わず襟を正す孝之。
それでも悪い気がしなかったのは、家に上がらせてもらう前の不安よりも、遙や家族の優しさがあったからだろう。
一方の水月は、ここ最近、水泳のタイムが伸び悩んでいた。
放課後や休日も一人でプールに足を運び自主練習を繰り返す日々。
遙とのデートの日、家の電話に何度も着信があったのが気にかかり、孝之は一人、学校のプールへ赴く。
その日は、町のお祭りの日。
遙と約束はしていたものの、水月を放っては置けなかった孝之は、思い出の丘で水月の話を聞くことに。
そこへ、親友の慎二が遙を連れてやってくる。
「今日二人でお祭り行くからって、涼宮をほっぽっといて何してんだ!?」
そうとは知らなかった水月は、孝之に頼んで悩みを聞いてもらっていたことを遙たちに打ち明ける。
誤解もとけ、あらためて4人でお祭りに行くことに。
その前に、慎二のカメラで記念撮影をしようという話になる。
思えば、4人で写真を撮るのは、もちろん初めてだったが、これが最後の4人の写真になるとは、このとき誰一人として思いもしなかった。
お祭りの帰り、遙の部屋に上がらせてもらうことになった孝之。
初めての女の子の部屋ということもあり、妙に緊張してしまう。
部屋には様々な絵本。
将来は絵本作家になりたいと、小さな夢を語る遙に、孝之も思わず共感してしまう。
「そのときはさ、4人の友達の話、書いてくれよ」
そこへ突然帰って来た両親と茜。
いい雰囲気だった2人は驚いて平静を装う。
そんな怪しげな2人に茜の目も興味津々。
「もしかして、お姉ちゃんのこと食べた?」
思わず吹き出してしまった2人だったが、それでも応援してくれている茜に心が安らぐ。
そして再び二人きりになった部屋で、遙が孝之におまじないを教える。
いつまでもずっと、一緒にいるためのおまじない・・・のはずだった。
「夜空に星が瞬くように、とけた心は離れない たとえこの手が離れても、二人がそれを忘れぬ限り」
そして迎えた次のデートの日。
今日の待ち合わせは、柊町駅前。
遙との待ち合わせの前に慎二と喫茶店で話しこむ孝之。
白陵大学の入試参考書と、遙が以前探していた絵本を片手に、約束の場所へと足を急がせる。
その途中、偶然にも水月に呼び止められた孝之。
今日が誕生日だという水月に、露天で売られていた小さな指輪をプレゼントした。
「孝之ありがとう。あたしこれ、ずっと大切にするね」
プレゼントされた指輪を薬指にはめ、嬉しそうに微笑む水月。
そして改めて駅前へ急ぐ。
そこには、遙の姿ではなく、代わりに何十もの人垣ができていた。
「事故か・・・?」
胸騒ぎを覚えた孝之は、急いで遙を探し始める。
だが、そこにいるはずの遙は、どこにもいなかった。
代わりに孝之が目にしたものは、すでに原形をとどめていない公衆電話のボックスと、その周りについた生々しい血のあと。
そして、遙が愛用していた小さなリボンだけが、その血の海にポツリと漂っていたのだった・・・。
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