時は流れ、当時の4人はそれぞれの道を進んでいた。
孝之と水月も例外なく・・・。
その孝之は、ファミレスでアルバイトをしていた。
そのファミレスで今日に限らずトラブルが発生する。
同じアルバイトの大空寺あゆが、客からのオーダーを間違えて絡まれていた。
その時・・・
「ごるぁ~! 何さらしとんじゃ、このボケども~!!」
レストランに、店員らしからぬ罵声と怒号が飛び交う。
同じくバイト仲間の玉野まゆや崎山店長も、困り果てていたところへ、孝之が割ってはいる。
「どこの世界にイチゴパフェとオニオングラタンスープを間違えるやつがいる!?」
必死に諭そうとする孝之だったが、大空寺は相変わらず聞く耳を持たない。
「お前なんか、ネコのウンコ踏め~!!」
三度、ファミレスにあるまじき大声が店内に響き渡った。
バイトも終わり、今日は慎二と3人で居酒屋へ。
「久しぶりだな、3人揃うの」
慎二は高校卒業後、大学へ。
大学では4回生の追い出しコンパの幹事を務める頼られぶりの慎二。
少し肩身が狭そうな孝之と水月だったが、久しぶりに顔をあわせた昔のなじみで、すぐに時間が過ぎていった。
駅で慎二を見送った孝之と水月。
明日も仕事で早く出なければいけない水月を気遣う孝之だったが、今日はもう少しだけ一緒にいたいという水月。
付き合い始めて長いが、時折見せる奥の深い瞳が、さまざまな過去を思い起こさせる。
その夜、水月が唐突に切り出す。
「ねぇ、一緒に住もうか」
将来の淡い夢を語る水月と、少しだけ冷ややかに現実を語る孝之。
「無茶言うなよ、急に。いくらかかると思ってんだよ」
翌朝、孝之の家から直接会社へ向かう水月。
「住むか? 夜言ってたろ」
突然の言葉に一瞬戸惑う水月。
だが水月には思うところがあった。
「ここは3年前のままなのよ、孝之」
複雑な表情のまま、水月は出社していった。
会社では先輩の石田さんに注意されてしまう。
「昨日、彼氏んとこ泊まってきたでしょ。着替えくらいおいときなさいな、みっともない」
一方、孝之のバイト先、「すかいてんぷる」では、かの大空寺がゴールド免許を玉野に見せびらかしていた。
もちろん、一度も車を運転していないのだからゴールドになるのも当たり前。
だがその玉野も、免許はとっても運転はしないという。
「事故が恐ろしいゆえ・・・」
その言葉に、思わずはっとなる孝之。
忌まわしい過去の出来事が一瞬頭の中をよぎる。
今日も外回り営業で先輩に同行する水月。
サンプルを大量に両手に持ち、時折時間を気にしながらあとをついていく。
その道すがら、ジムのプールの横を通りかかったとき、水月の脳裏に昔の思い出がよみがえる。
それは、高校のころ水泳部のエースとして活躍していたころの記憶だった。
「水月、頑張れ~!」
遙が無邪気に応援してくれていたころの自分と、今の自分。
似ても似つかない現状に、思わず立ち尽くしてしまう水月。
その日の夜、水月は孝之を呼び出した。
そして近くの店に入った2人。
「ねぇ、はっきりしようよ私たち。このままじゃ、ダメだと思うの」
水月の素直な気持ちを受け、一瞬黙ってしまう孝之。
少し間をおいたあとで口を出た言葉。
「好きだよ」
だがなぜだか、目だけは微笑んでいなかった・・・。
店を出て再び駅へ向かう孝之と水月。
そこで、懐かしい顔を見かけた。
そう、遙の妹の茜だった。
いまや水泳部のエースとして頼れる先輩になった茜。
可愛い後輩を見送り、茜も向かうべきところへ向かおうとするところに、孝之に寄り添った水月と目が合う。
「茜、久しぶり」
思い切って声をかけた水月だったが、茜は目もあわせようとしない。
代わりに孝之に話しかける。
「鳴海さん、ご無沙汰してます」
久しぶりに会った茜は、昔のような屈託のない笑顔を向けることは一切なかった。
「これから病院なんです。急がないと面会時間に間に合わないので。失礼します」
思わず左手の指輪を隠すように、そっと手を重ねた水月と、それを気遣う孝之。
目をやれば、そこには昔のように公衆電話のBOXが、今は綺麗に建て直されていた。
そう、まるで何事もなかったかのように・・・。
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