学校の帰り道。
いつものように2人で並んで帰る水月と遙。
そこへ、茜も割って入り、賑やかなおしゃべりが始まる。
会社の営業で高校の近くを通りかかった水月は、3年間通った通学路に立ち、そんな光景を思い出していた。
「速瀬さん、何やってるの? 行くわよ」
先輩の声でようやく現実に戻される水月。
一方、遙の病室では、今日も中学校の制服を着た高校生の茜が、窓から遠くを見やっていた。
久しぶりに孝之に会いたいと言い出す姉の遙を、少しきつい口調で諭す毎日が続いていた。
「ダメだよお姉ちゃん。お兄ちゃん、受験勉強で忙しいんだから」
いたたまれなくなった茜は、花瓶の水を入れ替えると言って一人病室を後にする。
同じ頃、孝之の部屋では、これからの二人のことが気がかりでならない水月が、心配そうに孝之に話しかける。
「遙がよくなったら・・・そしたら、あたしたちのこと話すよね」
あの事故から3年。
自然の流れで付き合い始めた孝之と水月だったが、意識が戻った遙の前では、遙の彼氏でい続ける孝之。
そして、それがいつかまた本当のことになってしまうのではないかと不安に駆られる水月。
朝、久しぶりに通りかかった高校が、昔と大きく変わっていたことに少なからず寂しさを覚えた水月は、楽しかったあの頃を思い出しながらも、今の孝之との幸せな生活がいつまでも続けばいいと心から思っていた。
「あたしには孝之しかいないから。孝之しか・・・」
そういって寄り添ってきた水月を、孝之は優しく抱きしめ返した。
時は流れ、ここは孝之のバイト先、スカイテンプル。
今日も今日とて大空寺の子守をする孝之に、崎山店長が声をかけてくる。
「実は今夜のシフトに急に欠員が出まして、もしできればお願いしたいと」
だが、夜は遙のお見舞いに行くことにしていた孝之。
店長の頼みを断り、病院へ向かった孝之は、エレベーターの前で茜とすれ違う。
一瞬にして表情が曇る茜。
孝之の見舞いを快く思っていない茜は、すれ違いざまに吐き捨てるように孝之に声をかける。
「懲りないんですね」
そのまま目も合わさぬまま、階下へ降りていく。
病室での孝之は、3年前に戻って、遙のいい彼氏を演じていく。
ところが、遙の一言が、どうしようもなく孝之の感情を揺さぶる。
「ねぇ、おまじないしよう」
一瞬何もいえなくなる孝之の手を取り、懐かしいフレーズを刻む。
「夜空に星が瞬くように 溶けた心は離れない たとえこの手が離れても ・・・」
「遙、それは元気になってからにしよう」
おまじないが最後まで終わる前に手を解く孝之。
その真相は、いまだに水月のことを遙に伝えられていないことへの自責の念か・・・?
その帰り、バスを待っていた孝之は、遙の両親に声をかけられる。
孝之のためだと、遙の見舞いに来ないでほしいと頼んだ父の願い。
それは、今遙が必要としている孝之に、できる限りでいいから顔を見せに来てやってほしいというものだった。
「こんなことが頼める立場じゃないことはわかっています」
そういいながら深々と頭を下げる遙の父を前に、複雑な思いで返す孝之。
「遙は、僕にとって一番大切だった人ですから」
自然と口をついて出た言葉は、気づかぬうちに過去のセリフになっていた。
孝之のアパートでは、水月がいつものように夕食を作って待っていた。
「ねぇ、遙、どうだった?」
孝之が遙の見舞いに行くたびに不安になっていく気持ちを抑えて明るく振舞う水月。
一方、明日の仕事のことを気にして帰らなくていいのかとたずねる孝之。
後日、孝之は慎二の大学を訪ねていた。
遙の近況を伝える孝之に、慎二は念を押すように問いただす。
「お前、まだ涼宮のことが」
「速瀬を裏切るなよ?」
「頑張れよ。好きなんだろ?」
慎二の包み隠さない一言一言に、少なからず元気をもらった孝之。
対照的に、水月は、神妙な面持ちで、意を決したように遙の病院を訪れる。
そこで、茜と出くわし、思わず足が止まる水月。
「こんなに鈍い人だとは思わなかった」
とげのある言葉を投げ捨てる茜。
「帰ってください」
水月の必死の投げかけにも聞く耳を持たない茜は、そういって水月を追い返してしまう。
入れ替わりで孝之が現れる。
茜はあらためて捨て台詞を吐いてその場を後にする。
孝之のことを案じる不安そうな目は、茜本人しか知らないものだった。
その日もいつものように遙を見舞いに病室へ足を踏み入れた孝之。
高校時代の懐かしい話に花を咲かせる遙と孝之。
受験生ということもあり、受験への不安を口にする遙と、受験に失敗してフリーターをしている孝之。
遙はその不安を払拭するように、あらためておまじないをしようと切り出す。
「おまじない、いや?」
固まって動けなくなっていた孝之に優しく声をかける遙。
そして孝之は、覚悟を決めたようにおまじないのフレーズを刻みだす。
「夜空に星が瞬くように 溶けた心は離れない たとえこの手が離れても 二人がそれを忘れぬ限り」
そして、部屋に戻った孝之の目に飛び込んできたのは、水月が作ってテーブルに綺麗に並べられた夕食だった。
水月・・・遙・・・
2人の間で揺れ動く孝之。
物語は、動き始める。
運命のとき、最後のときは、刻一刻と近づいていたことを、孝之は、水月は、遙は、知る由もなかった。
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